大和路ー光と影 1
薬師寺

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イタリアの町並

アフガニスタンの町並

YKギャラリー
YKギャラリーにおいて作者山口佳延による京都・大和路等のスケッチが展示されています。但し不定期。
大和路を何度か訪れるうちに和辻哲郎のー古寺巡礼ーのことを思った。学生時代 に読んだ黄ばんだハードカバーの本を本箱の奥から引っ張り出し、何度読み直した ただろうか。
和辻哲郎が絶賛した聖林寺十一面観音菩薩立像のくだりでは、その描写、 表現に多くの学ぶべきものがあった。ただ単に描写が優れているというのではなく、哲郎の 裡深くに潜む感性が浮き出ているのであった。
歌人会津八一の南京新唱のうち、唐招堤寺を詠んだ、ーおほてらの まろき はしら の つきかげを つちに ふみつつ ものをこそ おもえー。この詩は幾度口ずさんだか 分からない。三十年振りに唐招堤寺を訪れ、その変わらぬ姿に一時、浮き世の喧噪を 忘れる思いだった。
二上山に眠る大津皇子のことを、当麻寺への参道を歩く途々遠望した二上山のふた瘤の 山頂を眼にし思った。まだまだ語り尽くせない。文、紀行文と絵を織り交ぜた構成です。
   
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読後感想
山口佳延写生風景
絵と文 建築家・山口佳延
   

 1 西の京一―薬師寺・唐招提寺・垂仁天皇陵

西塔がまだ再建されていなかった三十年前に薬師寺西方の大池を前景に、彼方の緑の木々に金堂、塔の甍がひっそりと浮かぶのを眺め大変、感動したことがあった。ぜひともその場所に行こうと、薬師寺の中門を出、廻廊沿いを西に歩いてゆく。  地図をたよりに地元の人に訊きながら、・・・・

 2 当尾の里―浄瑠璃寺・岩船寺

浄瑠璃寺三重塔は軸組部を光明丹で朱色に塗ってあった。岩船寺の塔は塗りものが剥げたのか、当初から塗ってなかったのか分からないが軸組部は素地のまゝで趣きがある。背後の鬱蒼とした林に同化し、古色豊かである。満開の桜花が野趣に富んだ景観に、一点の華やかさを添えていた。・・・・

 3 斑鳩の里一―慈光院・法起寺・法輪寺・法隆寺

 土塀を右に折れた小径には、両側から木立ちの枝葉が差し掛かり、小暗い空間でひんやりと冷気が漂う。いかにも妖怪が出そうな幽暗な空間だ。短い妖怪路のどんづまりに茅葺の楼門が立つ。戦国大名、片桐且元の大阪茂木城楼門を移築した質素な門だ。

 4 桜井から飛鳥へ―安倍文殊院・飛鳥寺・岡寺

満開の桜花、そして赤い幟、(のぼり)左手の旧い民家の漆喰壁、複雑に織り重なる瓦屋根、それらが変化のある景観を構成している。背景には飛鳥地方の優しい山並が、薄紫色に霞む。岡寺への参道は、旧い面影を失わずに遺した趣きのある参道であった。

 5 斑鳩の里二―法隆寺

大宝蔵院に続く左方の収蔵庫群の白壁が夏の陽差しを浴び、照り輝いていた。鏡池の東側の木蔭で、綱封蔵(こうふうぞう)のスケッチをしようと、構図の好い場所を探す。傍のベンチの木蔭で韓国の女性が一人で、五つほどの荷物の番をしていた。観光客のようだ。私がスケッチ・・・

 6 今井町から当麻寺へ

東西に伸びる御堂筋に面する称念寺の本堂は、大きくカーブした屋根を持つ。周囲の小さな町家、狭い道に比べ、突然大きなスケールを現し、眼前に迫ってくるのだった。  そのスケールアウトした大きさに、かつての今井町の財力を感ずる。さらに・・・

 7 西の京二―西大寺・秋篠寺から東大寺へ

 幽暗な堂内だが、スポットライトで、入口側に安置された伎芸天を始めとして、日光・日光菩薩像、薬師如来像を照らし、適度な陰影を仏像に投げ掛けていた。光を受けた仏像は立体感が強調され、ふくよかで柔らかな質感が、よく現れている。  入口側の左端に安置・・・

 8 聖林寺から談山神社へ

遠景の小丘、中景の聖林寺の甍、近景の野仏、それらが黄緑、青緑、濃緑の海原に、渾然一体となって、宗教空間を形成している。  温暖多湿な気候の中で、樹木に蔽われ、穏やかな光景だ。曖昧で明確な指標はないが、自然に包まれ、全てを包含する日本的風景を見る思い・・・

 9 山辺の道―大神神社・桧原神社・玄賓庵

併し、明るい方に吸い寄せられ、左手に山道を折れてゆく。山道は直に小丘に出た。小丘の狭い頂に、探策者が一人いた。其処からは大和盆地が一望の下、すばらしいパノラマが拡がっていた。思わず、  「素晴らしい景色ですね、どれが二上山ですか」  先客の中年の男・・・

 10 室生寺

表門前から川沿いに参道が伸びる。左方には錦秋の極楽浄土の世界が織り重なり、右手には広々と深く切れ込んだ室生川の流れがある。川底の岩石が水に透けて輝き、優しい流れを感じさせる。対岸には人家が川沿いに連なり、人工と自然が好く調和した光景・・・

 11 長谷寺

右上方には本堂屋根が、楓の紅葉に半分以上隠れ、その姿を現す。右に折れて登る登廊屋根が正面に遠望できる。背後の紅・黄・橙色に紅葉した楓が、それらの堂宇を包み込むかのように、一時の風雅を謳歌する。蝉が地上での一週間の僅かな命をあらん限り鳴き尽くしているかのような儚ささえも・・・

 12 興福寺・奈良町

薄暗い堂内の中ほどに、仏頭はスポットライトの光を受けて安置され、惚れ惚れするような微笑を浮かべ、遠く彼岸の世界を見詰めていた。山田寺仏頭は銅製であるが、金属でこれだけの表情を表現した造詣力に感心させられる。  いくらか上を向いた顔の左頬は、火災にあった・・・

京都・大和路インデックス    
大和ー光と影1
一 西の京一―薬師寺・唐招提寺・垂仁天皇陵
二 当尾の里―浄瑠璃寺・岩船寺
三 斑鳩の里一―慈光院・法起寺・法輪寺・法隆寺
四 桜井から飛鳥へ―安倍文殊院・飛鳥寺・岡寺
五 斑鳩の里二―法隆寺
六 今井町から当麻寺へ
七 西の京二―西大寺・秋篠寺から東大寺へ
八 聖林寺から談山神社へ
九 山辺の道―大神神社・桧原神社・玄賓庵
十 室生寺
十一 長谷寺
十二 興福寺・奈良町
十三
大和ー光と影2
一 吉野・金峯山寺蔵王堂
二 飛鳥一―飛鳥より八釣部落へ
三 甘樫丘
四 山辺の道二―崇神天皇陵・長岳寺・三昧田
五 五条―旧紀州街道
六 東大寺から浮見堂へ
七 壷坂寺八
八 二上山から当麻寺へ
九 山辺の道三ー長柄から天理へ
十 大和郡山城
十一 生駒聖天・宝山寺
十二 滝坂の道から柳生の里へ
十三 信貴山朝護孫子寺
大和ー光と影3
一吉野金峯山寺蔵王堂から大台ヶ原1
二吉野金峯山寺蔵王堂から大台ヶ原2
三吉野金峯山寺蔵王堂から大台ヶ原3
四吉野金峯山寺蔵王堂から大台ヶ原4
五吉野金峯山寺蔵王堂から大台ヶ原5





十一
十二
十三
    京都ー光と影1
一  等持院から金閣寺へ
二  銀閣寺から法然院へ
三  醍醐寺
四  上賀茂神社・社家
五  法然院から永観堂へ
六  今日庵から相国寺・下鴨神社へ
七  黄檗山萬福寺から興聖寺へ
八  大徳寺
九  高雄・神護寺から清滝へ
十  栂尾・高山寺から北山杉の里へ
十一 鞍馬寺から貴船神社へ
十二 
 
    京都ー光と影2
一  比叡山・延暦寺
二  曼殊院から詩仙堂へ
三  泉湧寺から東福寺へ
四  大原の里
五  西山の寺
六  祇園から八坂塔・清水寺へ
七  六角堂から楽美術館へ
八  赤山禅院から修学院離宮へ
九  円通寺から岩倉へ
十  伏見稲荷大社
十一 宇治・平等院
十二 桂離宮
       
    京都ー光と影3
一  嵯峨野ー渡月橋から大悲閣千光寺へ
二  嵯峨野ー天龍寺から常寂光寺・落柿舎へ
三  嵯峨野ー常寂光寺・落柿舎から二尊院へ
四  嵯峨野ー二尊院から祇王寺へ
五  嵯峨野ー仇野念仏寺から鳥居本平野屋・愛宕念仏寺へ
六  嵯峨野ー北嵯峨・直指庵から大覚寺へ1
七  嵯峨野ー北嵯峨・直指庵から大覚寺へ2
八  嵯峨野ー北嵯峨・直指庵から大覚寺へ3
九  
十  
十一 
十二
               

京都ー光と影 今日庵から相国寺・下鴨神社 に記された守本信一氏と柴崎氏は面識はない。
氏は紀行文の中で守本信一氏をよく知っている。
「守本さんには会ったことはないけれども、昔から知っているような気がする。守本さん元気ですか・・・」
と氏は顔を綻ばせていた。このことを守本さんに話し、互いに電話口で大笑いしたのはついこのあいだのことだ・・・ 京都ー光と影1へ戻る 
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